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生前契約は葬儀以外にもメリットが多い?詳しく解説

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生前契約は葬儀以外にもメリットが多い?詳しく解説

生前契約という言葉自体は聞いたことがあるかもしれませんが、その意義やメリット、どのように行うべきかは具体的に知らない方も多いです。生前契約は葬儀だけでなく遺産相続にも有効で、相続争いを防ぐことにも繋がるため、相続関係で悩みや心配ごとを抱えている場合にも有効な方法です。

そこで今回の記事では生前契約の概要やメリット、生前契約で必要となる書類の種類、費用、そして生前契約の注意点について解説します。生前契約について詳しく知りたい方は是非、最後までご覧ください。

生前契約とはなにか?

生前契約とは、存命のうちにお葬式の契約や、遺産相続に関する内容を決めることです。具体的には、自身の葬儀内容や流れ、予算、支払い方法など、契約に関する内容を葬祭業者と事前に契約しておきます。これは認知症の進行や病気などで適切な判断ができなくなってしまったり、自身の死後に身元の引き取りや、財産の管理の引き継ぎでトラブルが発生する可能性がある場合に有効です。

生前契約は、葬儀社、宗教法人、NPO法人、互助会などの様々な事業者が実施しており、それぞれサービス内容は多少異なるものの、基本的な契約内容に大きな違いはありません。

日本では1990年代に初めて生前契約のサービスが提供されるようになりました。しかし当時は、自身の死後についての準備をしておくことはあまり受け入れられませんでした。ただ、近年では終活という言葉が一般化したように、存命の元気なうちに、準備をしておくという考え方の人が増えています。

特に近年は、単身世帯が増えたこともあり、亡くなった後のことを任せる人がいないというケースも増えた結果、生前契約をする人も増え始めています。また、自身の死後、家族や身内に負担をかけたくない人、ご自身が望む形での葬儀をしたいという人も多く、利用されるようになりました。

「死後、家族に迷惑をかけたくない」

「葬儀は家族葬など、やり方に希望がある」

このように考える人にとっては、ご自身の葬儀や住まれている住居の整理などを希望通りにできるという面から注目されています。

生前契約のメリットとは

次に、生前契約をすることでどのようなメリットがあるのか、大きく3つに分けて解説します。

生前契約のメリット

自分の希望に合った葬儀ができる

葬儀の生前契約をしておくことで、自身の希望に合った葬儀をしてもらうことが可能です。これまで、葬儀といえば、死後に遺族が急いで準備することが多くありました。しかし、生前契約をすることで、存命中に時間をかけて葬儀場を探すことやプランを考えることができます。そのため、葬儀の内容や予算など、ご自身の希望を踏まえたプランでの葬儀を行うことができるのです。

遺族の負担を減らすことができる

葬儀の内容が決まっていると、遺族の負担を減らすことができます。費用面や、葬儀場の決定、内容など、本来であれば遺族が急いでしなければならないことを、存命中にしておくことで葬儀を行う遺族の負担軽減につながります。

また、亡くなった後の身の回りの整理についてもあらかじめ決めておくこともできるので、遺族の負担が少なくて済み、身寄りのない場合でも安心です。

遺産相続に関するトラブル回避

あまり身近に感じない方もいるかもしれませんが、遺産相続に関する内容も、考えておかなくてはならないことの一つです。遺産相続に関して何も決めていない場合、遺産が高額かどうか関係なく、亡くなった後、相続人が揉めるケースもよくあります。そのため、遺産相続に関しても存命中に決めておくことで、トラブルのリスクを低減することができるでしょう。

生前契約の種類を解説

生前契約と一言でいっても、いくつかの契約があります。

そこで、生前契約にどのような種類があるのか下記の順に、詳しく解説します。

生前契約の種類

生前事務委任契約

生前事務委任契約とは、契約者の家族や身内が本来行うようなサポートを代わりにしてもらう契約のことです。

生前事務の内容としては、自身の財産の管理や、生活支援などの存命中に必要な手続きを代わりにしてもらえるといった内容です。具体的には、老人ホームやアパート入居時の身元保証人になることや、病気や怪我をした際に医師から受ける説明や手術の立ち会いなどがあります。このように、ご自身で行うのが難しく、家族や身内が行うサポートを代わりに行ってもらうことができるのが生前事務委任契約です。

生前事務委任契約は、任意後見や法定後見と違い、判断能力がしっかりしている段階から、自分の意思で契約できるのが大きな特徴です。

生前事務委任契約では下記のような内容を委任することができます。

ポイント
⚪️財産の管理について
・ご契約している保険関係の手続き
・遺産の相続に関する手続き
・市区町村役場や税務署などで必要な手続き
・定期的な支出・収入の代行
ポイント
⚪️生活面や医療介護について
・住民票、戸籍謄本等の申請、取得など
・医療機関への入退院や老人ホーム入居時の契約
・医療上の判断に関する意思表示
・要介護認定の申請などの手続き

その他にも、エンディングノートの作成や、老後に必要となる資金計画の作成などの作業も対象となる場合もあります。

死後事務委任契約

死後事務委任契約とは、契約者が亡くなったあとに必要な処理をしてくれる契約のことです。

死後事務の内容としては、死亡した場合に提出する死亡届や葬儀、永代供養、公共料金の支払い、住居の整理など様々なものがあります。もちろん、ご家族や身内などで、死後のことを全て任せる人がいれば、わざわざ契約をする必要はないでしょう。

また、亡くなったあとの住居に、引き続き住む方がおられるのであれば、公共料金の支払いや住居の整理なども、葬祭業者にしてもらう必要はないでしょう。しかし、そういった人がいない場合や、家族や身内に大きな負担をかけたくないという人もおられます。そのため、そういった内容を代わりに行ってくれる契約が死後事務委任契約です。

死後事務委任契約では下記のような内容を委任することができます。

ポイント
・死亡届や火葬許可証など、行政の手続き
・葬儀や埋葬、納骨、永代供養などの手続き
・遺品整理
・病院や老人ホーム、住居などの請求対応・清算・解約手続き
・家族や身内、知人への連絡

そのほかにも、Webサービスやデジタルデータの解約・処分、ペットの引き継ぎ先の指定などの作業も基本的には対象となります。

任意後見契約

任意後見契約は、任意後見人に生活面や介護に関する事務について、財務管理の代理権を与える契約のことです。本人の判断能力が低下した場合、本人に代わって、任意後見人が代理権を与えられた内容を行うことになります。

生前契約で必要となる書類の種類

生前契約では様々な制度を利用することになります。ここでは、生前契約を結ぶ際に必要となる5種類の書類の内容について、詳しくご説明させていただきます。

財産管理委任契約書

財産管理委任契約書とは、財産の管理や入院や介護の手続きなどを委任者に任せる旨を記載した文書のことです。

契約書に記載される具体的な例として、下記のような内容があります。

例
本人と委任者の情報:本人と委任者の氏名・住所・連絡先などを記載します。
委任する財産について:契約する財産の種類や量を記載します。銀行口座や個人的な財産などが含まれます。
委任者の役割と責任:委任者の財産管理の方法や、責任について記載します。
報酬と費用:委任者が受け取る報酬や、費用について記載します。
契約の期間:契約の有効期間や終了条件を記載します。


事故や病気によって自身の財産の管理ができない場合に使用されます。親族や友人などの信頼できる人に、本人に代わって契約書内で委任した内容を行ってもらうことができます。

法的にも有効な契約書となっているため、委任した内容については、第三者が悪用することなどができず、安心して任せることができます。

尊厳死宣言書

尊厳死宣言書とは、重病や末期疾患にかかった場合、医療処置を受けない旨を記載する文書のことです。個人の意志を尊重し、延命措置を避けるために使用されます。延命措置をしない場合でも、苦痛などを軽減するために処置を受けることが可能です。

文書に記載される具体的な例として、下記のような内容があります。

例
医療処置の拒否:重病や末期疾患にかかった場合に、医療処置を受けない旨を宣言します。
苦痛の軽減:苦痛などを軽減するために処置を受ける旨を宣言します。

一般的に、契約者自らが契約を取り消すまで有効です。

法的にも、有効な文書となってはいますが、地域や国によっては法的な内容が異なるため、法律などを確認しておくことが重要です。

遺言書

遺言書とは、死後に財産や財産管理、遺産の分配、埋葬や葬儀に関する希望や、指示を記載する文書のことです。遺言書は、法的な手続きに従って作成され、署名されたあと、死後に執行されます。

文書に記載される具体的な例として、下記のような内容があります。

例
遺言者の情報:遺言者の氏名・住所・生年月日などの詳細な情報を記載します。
遺産の分配:遺言者が死後、財産や遺産をどのように分配するかを記載します。
財産管理人の指定:遺言者の財産を管理する人を記載し、指定をすることができます。
埋葬や葬儀の希望:遺言者が葬儀や埋葬などの希望を記載し、指示することができます。

遺言者の死後、葬儀や財産をどうするのか明確に決まっている場合に使用されることが多くあります。

法的にも有効な文書となっているため、死後に遺言書の内容が行われます。

死後事務委任契約書

死後事務委任契約書とは、死後に行う事務や手続きを委任者に任せる旨を記載した文書のことです。

契約書に記載される具体的な例として、下記のような内容があります。

例
本人と委任者の情報:本人と委任者の氏名・住所・連絡先などを記載します。
委任者が行う内容:委任者が行う具体的な事務や手続きを記載します。
委任者の権限:委任者が持つ権限や行うことができる事務の内容を記載します。
報酬と費用:委任者が受け取る報酬や、費用について記載します。
契約の期間:契約の有効期間や終了条件を記載します。
法的な手続き:委任者が契約に違反した場合の法的な手続きや救済措置について記載します。

家族や身内などの遺族や亡くなった人の関係者が、死後の手続きや財産の処理を行ううえでトラブルが起きないために使用されます。家族や身内などの遺族や、亡くなった人の関係者に代わって、特定の事務や手続きを行う委任者を指定できるので、死後のトラブルのリスク低減にもつながります。

法的にも有効な契約書となっているため、委任した内容については第三者が悪用することなどができず、安心して任せることができます。また、死後の手続きなどを、円滑に行うことができる重要な書類となります。

任意後見契約書

任意後見契約書とは、任意後見人に生活面や介護に関する事務について、財務管理の代理権を与える旨を記載した契約書のことです。任意後見人は、任意後見契約書に基づき、被後見人の利益を最大限に考慮しながら、財産管理や日常生活の支援を行います。

契約書に記載される具体的な内容を一覧にまとめました。

例
後見人と被後見人の情報:後見人と被後見人の氏名・住所・連絡先などを記載します。
後見人の行う内容と権限:後見人が財産や人身の保護、財産管理、法的手続きの代理などを行うための具体的な内容と権限を明確に記載します。
財産管理:後見人は、被後見人の財産を管理し、適切な投資や支出を行います。
日常生活の支援:後見人は、被後見人の日常生活の支援やケアをする責任があります。
報酬と費用:委任者が受け取る報酬や、費用について記載します。
契約の期間:契約の有効期間や終了条件を記載します。
法的な手続き:委任者が契約に違反した場合の法的な手続きや救済措置について記載します。

 

 

被後見人の判断能力が低下した場合、被後見人に代わり、任意後見人が代理権を与えられた内容を行うことになります。

法的にも、有効な契約書となっているため、委任した内容については、第三者が悪用することなどができず、安心して任せることができます。

生前契約にかかる費用

生前契約にかかる費用は契約内容によって、費用も変わるため、事前にしっかりと確認しておくことが必要です。そこで、生前契約で発生する費用について解説します。

生前事務委任契約の費用

生前事務委任契約をされる場合、大きく分けて2つのパターンに分かれています。それぞれの費用については、以下のようになります。

ご自身で家族や身内、その他の信頼できる人と生前事務委任契約を結ぶ場合、公正役場にて、手数料15,000円と用紙代(250円×枚数)が必要になります。

行政書士や司法書士に依頼をして、生前事務契約を結ぶ場合、安いケースだと月額約10,000円〜ですが、平均としては月額で約30,000〜40,000円になります。詳しい費用については、契約する内容などでも異なりますので、気になる方は、一度相談してみるのもよいでしょう。

死後事務委任契約の費用

死後事務委任契約の料金については契約内容によってかなり異なりますので、本記事では、行政書士と契約をする際の目安の料金をいくつかお伝えします。

ポイント
葬儀に関する対応:約70,000〜100,000円
埋葬・供養の対応:約100,000〜110,000円
遺品整理    :約50,000円
税金の解約・清算:約20,000〜55,000円(1件あたり)

本記事で記載した金額については目安になりますので、実際にご自身に必要な契約内容や金額など詳しく見積もりをされたいということであれば、一度行政書士に相談してみるのがよいでしょう。

生前契約の注意点とは

最後に、生前契約をされる際に注意しておかなければならないことについて、いくつかご紹介します。

葬儀が契約通りに行えない可能性がある

葬儀の内容を、どれだけしっかり話し合って生前契約をしても、葬儀などの死後事務委任契約が、希望通りにならない可能性があります。理由として、以下のような場合があります。

そもそも契約後、葬儀を行うのがどれぐらい先になるのかわかりません。契約から葬儀を行うまでの期間が長ければ長いほど、一般的なお葬式の方法やマナーが変化したり、物価の変動によって契約時と状態が変わってしまうというケースがあります。

以上のことから、契約前にそういった内容についてしっかりと、葬祭業者と話し合いをしておくのが良いでしょう。

現在の世の中では、葬祭業者が倒産や廃業するケースも少なくありません。契約前に葬祭業者の信頼性や経営上の方針、葬祭業者都合によって葬儀を行えない場合の対応についてしっかりと確認して葬祭業者を選びましょう。

契約内容の変更ができない場合がある

葬祭業者によっては、契約のプランを見直しできるタイミングが更新の際だけの場合や、そもそも見直しや更新をできない可能性があります。見積りの段階で生前契約のプランの見直しや更新の可否についても確認をしておきましょう。

また、解約金がかかるかどうかもしっかり調べておいた方が良いでしょう。基本的に契約書内に記載されているので、解約金がかかるのか、解約時に支払ったお金が返ってくるのかなど確認しておきましょう。わからない場合は、葬祭業者にきちんと確認をするべきです。

万が一、契約書をよく読まずに契約をしてしまった場合でも、一度、消費生活センターに相談してみるのが良いです。

家族や身内の理解を得ておきましょう

どの契約についてもそうですが、特に亡くなられた後のことについては、存命中に家族や身内としっかり話し合いをして、納得をしてもらったうえで契約をしておくのが良いです。契約者が一人で全て決めてしまった場合、納得いかないと感じる家族や身内もいるかもしれません。もし、納得されていない場合、家族の中にわだかまりが残ることや、相続争いが発生し、結果的に家族の負担になってしまうということもよくあります。

葬儀の内容や、費用面、遺産関係など重要なポイントはたくさんありますので、都度、話し合いをしたうえで契約内容を選ぶことをおすすめします。亡くなられた後に、葬儀や遺産関係の話に関わるのは、ご自身ではなく家族の方だということを意識した上で準備を進めるのも大切です。

生前契約を有効に活用しよう

本記事では、生前契約を行うメリットや種類、費用や注意点など、詳しく解説をさせていただきました。ご紹介したように、生前契約は残された家族の負担を軽減し、自分の希望の形での葬儀や相続が可能になりますので、ぜひ一度検討することをおすすめします。

生前契約については専門的な書類を数多く作成する必要があるため、葬儀や相続に関する知識を持つ人と相談しながら進めていく方がスムーズです。その際、葬祭業者が倒産するなどのリスクもあるため、どの範囲までを生前契約で進めるかは慎重に検討しましょう。

ぜひ、この機会に一度、ご自身の今後についてと、生前契約でできることを照らし合わせて考えてみてください。

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