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散骨にはできる場所・できない場所がある?判断基準や注意点、ケースごとの費用相場を解説

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散骨にはできる場所・できない場所がある?判断基準や注意点、ケースごとの費用相場を解説

近年注目されている供養方法に散骨があります。自然葬のひとつで「自然に還る」という考え方のもと、「好きだった場所で眠りたい」という故人の願望を叶えることもできる供養方法です。

外国では一般的な供養方法で、ドラマや映画で見たことがある人も多いのではないでしょうか。日本でも、超高齢化社会・少子化問題など様々な社会問題を背景に墓じまいを検討する方も増えており、お墓の後継者不足の解消や、後世への金額的な負担の軽減などのメリットからも散骨への需要が高まっています。

日本では、散骨は比較的新しい供養方法です。そのため、散骨のメリットやデメリット、どんな決まり事があるのかを知らない方も少なくないでしょう。また、散骨にはできる場所、できない場所があります。この記事では、その基準についてや散骨における注意点、かかる費用相場について解説していきます。

散骨とは?

散骨とは自然葬のひとつの供養方法です。「自然の循環に回帰する」という考えのもと、海・山・空などへパウダー状にしたご遺骨を散布します。

散骨には自由なイメージがあるかもしれませんが、実際のところはどうでしょうか。日本における散骨の法律についてや、メリット・デメリットについて解説していきます。

散骨は違法?

「散骨は違法なのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、現段階では法律的な観点から見た場合、散骨は違法ではありません。

これは、散骨に関する法律が定められていないからです。なので、違法ではありませんが、合法とも言えないのが現状です。ただし、非公認ではありますが政府(旧厚生省)から「散骨は、希望する者が相当の節度を持って行う場合、処罰の対象としない」という見解が示されています。そのため実質的に散骨は政府も埋葬方法として認めているということです。ただし、好き勝手に散骨してしまうと、刑法第190条や墓埋法、地域の条例によっては違法になる可能性もあるため、よく理解しておくことが重要になります。

・刑法第190条死体等遺棄罪

遺骨を遺棄すると3年以下の懲役刑。遺骨と分かる状態のまま散骨するのは違法になるので、必ず粉骨(パウダー状:2㎜以下)にすることが必要です。

・墓地、埋葬等に関する法律(通称:墓埋法)

焼骨の埋蔵は、墓地以外区域にはしてはならないとされ、違反した場合は罰則や罰金が科出られます。

散骨のメリット・デメリット

散骨のメリット

埋葬を行わないため、お墓は必要ありません。そのため、お墓の永代使用料、墓石費用、管理費が発生しない分、一般的な埋葬方法より費用が抑えられます。

お墓がないため、管理や維持をする必要がなく、負担を軽減できます。

お墓がないため、継承する必要もありません。そのため、お墓を気にせずどこにでも住めるし、仕事も選ぶ幅が広がります。

生前故人の好きだった場所や、趣味にまつわる場所に散骨することができます。また「自然に還りたい」という自然回帰思想など、故人の願いを尊重し、思いに寄り添った供養方法を選択できることも魅力のひとつです。

散骨のデメリット

散骨は日本では比較的新しい供養方法です。ご遺骨を粉骨しなくてはいけないことに抵抗感を感じる方も少なくないので、周囲の理解を得られにくいことが考えられます。

ご遺骨をすべて散骨してしまうと、証明書は発行されますが、それ以外その人が生きていた証が手元に残りません。お墓や墓標があれば戒名や命日が刻まれているため、子孫にもどんな人が家族にいたのか伝えることができます。散骨の場合、それができないので、故人をしのぶには残された遺族が写真や、散骨場所、時間、日にちなどを記憶しておかなければいけません。

散骨する場合、お墓は不要です。お墓には納骨する場所というだけでなく、故人に思いをはせることのできる場所でもあります。お墓参りをすることで、故人との思い出に浸ったり、気持ちに区切りをつけたりすることができるので、お墓がないと寂しいと感じる人もいるでしょう。

関連記事:散骨をするメリットとデメリットは?トラブルになる原因と対策を解説

散骨の判断基準

散骨ができるかどうかは、基本的には私有地なら可能です。ただし水源がある場合や、観光地、人が多く利用する場所は避けましょう。また、他人の私有地の場合は、所有者の許可をもらえば散骨可能です。国有地も国の許可があれば散骨できますが、許可が下りることはまずないでしょう。ここではできる場所・できない場所についてやマナーを解説していきます。

メリット

散骨できる場所

基本的には自身の私有地なら、散骨できます。ご自身で山や土地を所有している場合は、自由に散骨できます。

注意点としては、私有地であっても散骨の場合は、墓碑・墓標・お墓などは建ててはいけません。その代わりに何か目印になるような岩や木など地形を覚えておくと、後から供養しに来る場合に散骨場所が把握できます。また、穴を掘って遺骨を埋めたり、撒いた骨の上から土をかけることは違法となるため、注意しましょう。

海の場合に散骨できる場所は、岸から離れた沖合です。

散骨業者向けのマニュアル「散骨に関するガイドライン」では海岸から一定の距離以上離れた海域を選ぶように示されているので、少なくとも岸から2㎞以上離れていれば、風評被害などの問題は避けられるでしょう。注意する点として、海水浴場、浜辺、漁業区域、養殖場、防波堤などの観光資源や水産資源の拠点や周辺での散骨はできません。

山の場合に散骨できるのは、基本的にはご自身の私有地です。それ以外だと他人の所有地ですが、こちらは所有者の許可をとらなければいけません。

散骨を代行する業者の中には、散骨用に土地を所有している場合があります。散骨業者の所有地なら、業者と契約を結べば風評被害の心配や許可取りも不要なため、安心して散骨を行えます。

デメリット

散骨できない場所

国有地に関しても許可が得られたら可能ですが、風評被害の観点からもまず許可は下りないでしょう。そのため散骨できません。

川や湖は、生活用水としてや水源としての利用があるため、散骨はできません。

多くの人が利用する公園やテーマパーク、公共施設では散骨できません。いくら故人が好きだった場所であっても、他の人からすれば「知らない人の粉骨が撒かれた場所」「気持ち悪い」などの風評被害に繋がります。

いくら自分の所有する私有地といっても、自宅での散骨はおすすめできません。周辺地域の方からのクレームになりかねません。また、土地自体の価値を下げてしまいます。引っ越しする可能性が少しでも考えられるなら自宅での散骨は控えましょう。

散骨の種類と費用相場

ここまで散骨できる場所とできない場所について解説してきました。散骨には風評被害や周囲の理解を得ること、散骨の許可などが必要なことも分かっていただけたと思います。上記の内容を理解したうえで、散骨を選択するならそれぞれの散骨方法と費用相場についても知っておきたい情報です。ここからは散骨方法とそれぞれの費用相場について紹介していきます。

チェック

海洋散骨

1家族のみで散骨する散骨方法です。1家族の遺族だけでチャーターするため、落ち着いて散骨できます。ただし、チャーター代金は船の大きさに比例して高くなるので、参加人数が多いほど大きな船をレンタルする必要があり、相場よりも高くなる可能性があります。

複数の家族と合同で同じ船に乗り、散骨を行います。その場合はチャーター代金を分担するため費用を抑えられます。ただし、人数制限があることや、日程は散骨業者に指定されることもあり、個別の場合と比べると自由度は低いです。

遺族は乗船せず、散骨業者が代理で散骨を行う方法です。自分たちの手で散骨することはできませんが、天候の良い日を選び散骨業者が行ってくれるので、安心して任せられます。散骨が行われた証として、散骨証明書や写真を後から届けてくれるサービスもあるので、確認してみましょう。

チェック

山林散骨

自分の所有地の山や山林に散骨する分には無料です。他の人の所有地の場合は事前に相談し、合わせて費用の確認もとりましょう。「無料でいい」といわれたら0円ですし、「22万円で」など値段設定があれば言い値を支払うことになります。自分たちで散骨する場合は、散骨場所まで行く送迎車両を別途準備する必要があります。

散骨を代理で頼む場合、個人でボランティアで散骨に協力してくれるひとたちがいるので、その時は気持ちでお金を包んであげると喜ばれます。しかし、証明書や写真などまで準備できないかもしれませんし、不要なトラブル回避のためにも専門業者に頼むことがおすすめです。専門業者の中には、散骨用に土地を所有している場合があり、散骨までのプランを用意してあるので、自分たちに合ったプランを選ぶことができます。

チェック

空中散骨

空への散骨は、上空から海に散骨する方法です。そのため、ヘリコプターをチャーターする必要があり、約30万円〜50万円ほどかかります。他にもバルーン葬があり、大きなバルーンにパウダー状にしたご遺骨を入れて飛ばし、成層圏で破裂させることで散骨を行う方法です。約20万円前後かかります。

人工衛星やロケットにご遺骨を搭載し、宇宙空間まで飛ばす方法です。費用は大変高額ですが、「故人に星になって見守ってほしい」という願いや、故人が宇宙に対して強い憧れを持っていた場合などに選ばれるようです。最近では、ロケットに位置情報システムを搭載し、今どこにあるのか知ることができるので、その方向に向けて故人をしのぶことが可能になっています。数週間から数年間地球の周りを周回し、いずれは破壊されます。そのため、流れ星供養とも呼ばれています。

関連記事:散骨の費用はどのくらいかかるの?散骨方法と相場について解説

散骨するときの注意点

散骨は魅力的な供養方法ですが、日本ではまだまだ一般的ではありません。そのため、散骨に対する知識不足から偏見を持っている人や、また理解したうえで受け入れられないと感じる人もいるでしょう。故人の望みだからといって勝手に散骨してしまうと、後から家族・親族間でトラブルに発展してしまいます。ここからは散骨するときの注意点について4つ紹介します。

①家族・周囲の理解を得る

故人が散骨を望んでいる場合、できることなら叶えてあげたいですよね。散骨するには遺骨を粉骨(パウダー状)することが必要ですが、その行為自体に嫌悪感を持つ方は少なからずいます。また、先祖代々のお墓がある場合は「なぜお墓があるのに入ってくれないの?」と不満に思う方もいるでしょう。そういった親族間でも意見に違いがあるのは、当然のことだと思います。

散骨を希望するのなら、生前から周囲の人に希望を伝えておくことが大切です。そして、そのことについてよく話し合い、理解を得ておきましょう。話し合っておけばそれぞれの意思が確認できますし、希望通り散骨できる可能性も増えます。

②法律を理解する

散骨に関する法律は、今現在は存在しません。しかし、遺骨の埋葬方法についての法律(墓埋法)や、刑法第190条の死体等遺棄罪、各地域の条例などを理解したうえで散骨を行わなければ、法律に抵触する可能性があるので注意しましょう。

③ご遺骨は粉骨する

散骨する場合、少しでも遺骨だとわかってしまう状態だと法律違反になってしまいます。そのため必ず粉骨(パウダー状)にしなければなりません。具体的には2㎜以下にしないといけないことが決められています。

④自然に還らない副葬品は避ける

供養を行う際、献花や御酒、装飾品、故人が好きだったもの(お菓子)を一緒に弔いたいという気持ちは理解できます。しかし、自然に還らないようなビニールなどは、後に環境や生態系へ悪影響を及ぼす恐れがあります。自然保護の観点からも不要なもの、ゴミなどは散骨後は持ち帰りましょう。

⑤服装は平服で

散骨は、周囲の人に「今から散骨します」ということがわからないように配慮しなければなりません。どれだけ気を付けていたとしても、喪服を着ている人が何かを撒くしぐさをしていれば、それを見た人は良い感情にはならないでしょう。そのため、散骨時は喪服はNGとされています。また、散骨する場所が海ならば船に乗らなければいけないし、山林ならその場所まで自分でいかなくてはいけません。そのため落ち着いた色味の平服で、動きやすい服装、履物(スニーカー)がおすすめです。

散骨の流れや手続きを理解して進めましょう

散骨にはできる場所・できない場所があるだけでなく、できる場所にも条件がクリアできていないと散骨が難しい場合があることがお分かりいただけるのではないでしょうか。

散骨は粉骨(パウダー状)にすることが必ず必要です。2㎜以下になるようにしなければなりません。自分で行うことも可能ではありますが、故人との思い出を有している遺族には、精神的にも体力的にもつらい作業です。粉骨だけを行ってくれる専門業者があるので、1万円〜3万円ほど費用は掛かりますが、綺麗なパウダー条に粉骨をしてくれます。また、焼骨には六価クロムという発がん物質が含まれているため、安全のためにも専門業者で粉骨することをおすすめします。

許可取りが難しい場合や、地域によっては散骨を禁止している自治体もあります。散骨をしたいと考えるなら、まずは自身の地域の条例などについて、市区町村役場に確認してみましょう。

散骨の基準としては、私有地であることと、風評被害に繋がらないようにすることが大きなポイントと言えます。故人は大切な家族ですが、他人から見れば、粉末状にした骨を撒いているその行為自体に「気持ち悪い」と思ってしまう人もいることを理解しましょう。そのうえで、他の人に迷惑がかからないように、不快にさせないように散骨を行う必要があります。できるだけ散骨していると周囲に悟られないようにしましょう。

また、散骨には散骨方法に種類があり、それに伴い費用もさまざまです。メリットでもお伝えしたように、散骨は一般的な供養方法に比べ比較的安価で行うことができ、後の維持費、管理費の負担がないことが魅力のひとつです。しかし、選ぶ供養方法によっては、一般的な供養方法より高額になってしまう場合もあるので、一概にどちらがお得とは言えません。散骨のメリットだけではなく、デメリットも含めてよく供養内容や費用相場を検討し、希望に合った散骨方法を選びましょう。


監修者

海庵

僧侶でもあり、何度でもお墓の引っ越しができる「納骨堂転葬サービス」の会社、株式会社徳禅庵代表の海庵誠二です。お墓や終活、遺産整理に関するお役立ち情報を発信しております。


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